子供の自殺者数が増加している。『』(集英社新書)の著者で精神保健福祉士の植原亮太さんは「文科省は自殺予防対策として、『命の大切さ・尊さを教える』『周囲に助けを求めるように指導する』などとしているが、それで自殺者数を減らせるとは思えない」という――。
514人。これは令和4(2022)年における小中高生の自殺者数です。日本全体の自殺者数は3万人台をピークに減少し、ここ数年は2万人台前半で推移していますが、子どもの自殺は増加に転じています(「」厚生労働省より)。
文部科学省「」によると、例年、自殺の動機は「進路に関する悩み(入試に関する悩みを除く)」
学校では自殺予防対策の一つとして、児童・生徒に命の大切さ・尊さを教えたり、悩みがあれば身近な大人(両親や教師など)に助けを求めたりするよう指導しています。ほとんどの子供にとっては有効とされるこの対策ですが、最も保護されるべき「自殺リスクの高い子供」に対しては、自殺予防の本質をついていると私には思えません。
本稿では、その理由と取り組むべき課題についてカウンセラーの視点から述べていきます。
※以下の事例は、本人の特定を避けるため、事実関係の一部を加工しています。
「あの、実は希死念慮があるんです。小学生の時からで、ずっと、なんとなく死んじゃいたいっていうか、いなくなりたいっていうか。別に、生きている楽しみとか将来の希望とかないし。先生は生きていて楽しいですか?」
ある中学3年生の女子生徒が、はっきりと「希死念慮」という言葉を使ってスクールカウンセラーである私に言いました。彼女は成績も悪くなく「特に問題ない子」です。なので、これといって教員間で話題に上がったこともないようです。しかし、いつも教室でポツンと過ごして机に顔を伏せていることが多い彼女が気になった私は、校内の相談室に呼んで話を聞いたのでした。
それから数回の面接を経て、彼女は日常的に自傷行為をしていると話すようになりました。実際に傷を見せてくれましたが、手首から肘のあたりにかけて等間隔に刻まれていて「苦しいときにやると、気が紛れる」と言います。
初めて死のうと思ったのは小学校4年生の時だった、学校の階段から飛び降りたが高さが足りなくて死ねなかった、不自然なけがの仕方を不審に思った養護教諭から事情を聞かれたが、本当のことを話したくはなかった。
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