帯に「芥川賞受賞作『しんせかい』に連なる驚異の新天地、反自伝小説!」とあるが、読み終わると〈半自伝〉ではなくて〈反自伝〉であることの意味がすとんと胸に落ちてくる。小説を書きながら劇団「FICTION」を率いる〈わたし〉は、演劇仲間と過ごしてきた日々を回想しつつ、現在――仲間の1人ががんで亡くなり、また別の1人は半身不随になった――を思索する。
というふうにいわゆる〈あらすじ〉をまとめてみることも、登場人物や人物相関を具体的に紹介することも、ほとんど意味がない。そこがこの読書体験のスリリングなところで、そもそも私が山下澄人の小説に惹かれてきたのも、内容以上にその文体やスタイルのためだった。
ひとつの章のなかで、ときには改行さえなしに突然時間が飛ぶし、現在と過去とがほぼ同じ時制で書かれる。
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