「東京23区の人口格差」20年先まで伸びるのは千代田、中央、港、文京、品川、渋谷のみ…すぐにも大幅減の区は? 時間とともに格差はジワジワと広がっていく
2024/01/22

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日本の人口減少が止まらない。東京23区も例外ではない。近著『』が話題の拓殖大学教授・佐藤一磨さんは「23区内では2035年をピークに人口減少に転じる。そして区ごとの人口格差は徐々に開いていく」という――。

人口減少は東京23区も直面する問題

現在、日本は人口減少という大きな問題に直面しています。人口の減少は、2つの大きな社会問題へとつながっています。

1つ目は、経済成長の鈍化です。人口の減少によって、①働く人々の減少、②住宅ストックや企業の従業員1人当たり資本装備の減少、そして③新しいアイデアを持つ若い人々の減少による生産性の低下が発生し、経済成長が鈍化すると考えられています (*1)

2つ目は、社会保障制度を維持できなくなる可能性です。現在の社会保障制度は、現役世代が引退した高齢者世代を支える構造となっているため、少子高齢化によって若年人口の減少が進むと、社会保障制度が維持できなくなる恐れがあります。

これらの問題に対処するためにも、政府を中心として少子化対策が進められています。ただし、少子化対策によって人口減少を阻止することは難しい状況にあります。このままでは2060年前後に人口が1億人を切ってしまうと予想されているのです。

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このように日本は人口減少という大きな問題に直面しているわけですが、日本の中心である東京も例外ではありません。東京には仕事も多く、全国から人が集まってくるため、人口減少の例外になるかと思いきや、2030年以降に人口減少が始まると予想されています (*3)

この中でも特に興味深いのは、23区の動向です。

2035年以降、23区内でも人口が増え続ける地域と、減少し始める地域に分かれていきます。東京の23区内でも人口格差が生じる可能性があるわけです。今回はこの点について詳しく説明していきたいと思います。

東京都の人口は2030年にピーク、23区は2035年にピーク

東京都は1959年以降、5年に一度の国勢調査のデータを用い、東京都の人口予測を行っています。予測の対象は、外国人を含めた東京都に常住する人口です (*2)。今回は2020年の国勢調査を基に算出された、2025年以降の区市町村ごとの男女年齢(5歳階級)別人口の予測値を活用していきたいと思います (*3)

図表1は2020年以降の東京都全体の人口予測を示しているのですが、2030年にピークとなり、人口は約1424万人となります。これ以降人口は緩やかに低下し、2045年には人口が1379万人になると予測されています。

次の図表2は東京23区の人口予測を示しています。これを見ると、区部の人口のピークは2035年であり、東京都全体よりやや遅くなっています。

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ここからは東京の23区以外の地域(多摩島しょ地域)での人口の減少が早いことが読みとれます。

いずれにしても、東京23区でも2035年以降に人口が徐々に減少していきます。

2045年まで人口が増え続けるのは6つの区のみ

それでは次に東京23区の人口変化を見ていきたいと思います。図表3は23区の人口の変化を示しており、表中の値は各5年間で人口が増加したのか、それとも減少したのかを示しています。単位は万人です。なお、表中の赤字は人口が減少した場合を示しています。

この表から興味深い3つの結果が読み取れます。

まず1つ目は、2045年まで一貫して人口が増え続けるのは、千代田区、中央区、港区、文京区、品川区、そして渋谷区の6つのみだということです。

これらの区は2045年まで人口が緩やかに増えていきます。中でも比較的人口の増え方が大きいのは、中央区、品川区、文京区の3区です。これらの区は、人口減少時代にあっても人が集まり続ける魅力ある地域だといえるでしょう。人口が増え続けるということは、不動産価格にも影響を及ぼし、不動産価格が今後も値崩れしにくいと予想されます。

人口の減少が大きい足立区

2つ目は、2025年以降から人口が持続的に減少するのは、江戸川区、葛飾区、足立区、荒川区、そして豊島区の5つだという点です。これらの区では2025年以降、5年ごとに平均約7000人ずつ人口が減っていくと予想されます。

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中でも人口の減少が相対的に大きいのは足立区であり、5年ごとに平均約1万人ずつ人口が減っていく可能性があります。

東京23区といえど、人口減少は他人事ではないというわけです。

2035年以降には新宿区、目黒区、世田谷区でも人口減少

3つ目ですが、1つ目と2つ目以外のすべての地域が2035年以降に人口減少を経験するという点です。この中には新宿区、目黒区、世田谷区などが含まれています。新宿は繁華街、目黒はおしゃれな街、世田谷は高級ベッドタウンというイメージですが、これらの地域も人口減少から逃れることができません。

ちなみに、2035年以降で相対的に人口減少の規模が大きいのは、大田区、板橋区、練馬区の3つです。これらの区では5年ごとに平均約7000人ずつ人口が減っていくと予想されます。

さて、これまでの内容を整理すると、東京23区内において人口が増え続けるのは、千代田区、中央区、港区、文京区、品川区、渋谷区の6つのみであり、それ以外の区ではタイミングは違えど人口が減少していくといえます。時間がたてばたつほど、23区内の人口格差が明確になるといえるでしょう。

区によって人口減少の大きさが違うのはなぜか

これまで見てきたとおり、区によって人口変動が違うわけですが、何が背景にあるのでしょうか。これには「自然増減数」と「社会増減数」の2つの要因が影響しています。

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「自然増減数」とは、死亡する人数と新たに生まれる子どもの数の差を意味しています。死亡する人の数が多ければ人口は減りますし、逆に生まれる子どもの数のほうが多ければ人口は増えていきます。

「社会増減数」とは、その地域に転入して来る人と転出していく人の差を意味しています。転入してくる人のほうが多ければ人口は増えますし、逆に転出する人が多ければ人口は減っていきます。

この2つの要因が区によって大きさが違い、人口変動に差が生じます。東京都はこれら2つの予測値も公表しています。図表4は「自然増減数」の予測値であり、図表5は「社会増減数」の予測値を示しています。これを見ると興味深い2つの結果が読み取れます。

まず図表4の「自然増減数」を見ると、2020年以降、東京23区のほとんどで自然増減数がマイナスになっています。

これは各区で住んでいる人の死亡数が出生数を上回る状態にあることを意味します。東京23区内でも高齢化による死亡数の増加によって、人口が減少するわけです。なお、2045年までの間で自然増減数がプラスとなるのは、千代田区と中央区であり、これらの区は図表1の中でも人口が増え続けるグループに入っていました。千代田区と中央区は出生数が死亡数を超える状況にあり、他の区とは明らかに違った動きをすると言えるでしょう。

23区には人が集まり続けるが…

次に図表5の「社会増減数」

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を見ると、すべての区で社会増減数はプラスになっています。これは転入が転出を上回っていることを示しており、2045年まででも東京には人が集まり続けることを意味します。ただし、時間がたつにつれて、多くの区でプラスの値が徐々に小さくなっています。これは東京に人が集まってくるけれど、その規模が縮小傾向にあることを意味します。おそらく、少子化によって地方から東京へ移住する若年人口が減少することが背景にあるのでしょう。

これまでの話を整理すると、今後も23区には人が集まり、「社会増減数」はプラスになりますが、そのプラスの規模は徐々に低下していきます。これと同時に死亡数が出生数を上回り、「自然増減数」がマイナスとなって、人口が減少するようになると考えられます。このタイミングが各区で異なるわけです。

東京23区のほとんどが直面する人口減少への対策が急務

これまで見てきたとおり、今後東京23区内において、人口が増える区と人口が減る区に分かれていきます。ただ、タイミングに違いが見られるだけで、ほとんどの区は人口減少に直面します。

人口の減少は社会の活力を削ぐだけでなく、社会保障制度の持続可能性にも懸念をもたらします。このような課題に対処するためにも、さらなる少子化対策への取り組みが求められます。

(*1)内閣府HP「選択する未来」の「」を参照。
(*2)常住する人口とは、国勢調査の定義では、調査時に調査の地域に常住している者をさしています。
(*3)

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