11年目の『モンスト』が「モバイルゲーム収益ランキング」トップに立ち続ける理由
2024/01/23

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©MIXI

 モバイルアプリ/ゲームに特化したデータ分析プラットフォームを提供するSensor Towerは1月17日、2023年下半期における日本のモバイルゲーム収益/ダウンロード数ランキングを発表した。

参考:

 収益ランキングで1位となったのは、2013年10月にサービスが開始され、昨年で10周年の節目を迎えた『モンスターストライク』(以下、『モンスト』)。今期における収益は2.8億ドル(1月20日時点の為替レートで約410億円)に上るという。同タイトルがトップの座に輝いたのは、2022年下半期、2023年上半期に続き、3半期連続となる。あらためてモバイルゲーム市場での存在感を示した形だ。

 なぜ『モンスト』はリリースから長い時間が経過した現在もなお、トップの座に君臨し続けられているのだろうか。長寿の理由へと迫る。

■「ひっぱりハンティング」を代名詞に一世を風靡したモバイルゲーム『モンスターストライク』

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 『モンスト』は、株式会社MIXIが配信するAndroid/iOS向けアクションRPGだ。プレイヤーはモンスターの収集・育成を繰り返しながら、お気に入りの4体でパーティーを編成し、さまざまなクエストへと挑戦していく。

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特徴的なのは、バトルにおける操作方法。味方モンスターをドラッグによって引っ張り、指を離した反動で敵へとぶつけることが、主な攻撃手段となっている。このような性質から「ひっぱりハンティング」というキャッチコピーで売り出され、サービス開始直後から多くのユーザーを獲得した。2023年末には、世界での累計利用者数が6,000万人を突破している。

 2014年からは、活躍の舞台をeスポーツ、家庭用ゲーム機、アニメ、漫画、ライトノベルなどの分野へと拡大。「モンスト」の名が冠された同タイトルのためだけの大会『モンストグランプリ』は2015年以降(2022年まで)、8年連続で開催されている。2019年に実施されたアジアチャンピオンシップでは、賞金総額が1億円の大台を突破したことも話題を呼んだ。

■『モンスト』長寿の秘訣は“2つの遊びやすさ”にあり

 なぜ『モンスト』はリリースから10年という長い時が経過してもなお、トップの座に君臨し続けることができているのだろうか。私は「遊びやすさ」にその秘密があると考える。

 ひとつが直感的な操作によってもたらされる「遊びやすさ」だ。先にも述べたとおり、『モンスト』はドラッグによって引っ張ったところから指を離したときの反動を利用して敵への攻撃を行う。この点がおなじジャンルに分類される他のタイトルにはない特徴だ。誰でも直感的に理解できるシステムであるため、(他のタイトルにあるような)難しいバトルシステムを覚える必要がない。

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だからこそ、年齢・性別を問わず、多くのプレイヤーに訴求できている部分があるのだろう。

 そして、この「弾き飛ばす」という行為の面白さは、古くから広く支持されてきたものである。おはじきやベーゴマ、ピンボール、ビーダマン、ベイブレードなど、類似する遊びの例は枚挙にいとまがない。より大きな解釈で考えれば、相撲やおしくらまんじゅうなども同様の文脈であると言える。それぞれのユーザーが無自覚に、青春時代に流行した遊びの面影を『モンスト』に重ねているのではないか。

 ふたつ目は、クエストの豊富さによる「遊びやすさ」だ。『モンスト』には、難易度や性質の異なる多種多様なクエストが用意されている。そのため、初心者から上級者までの全員が各々のレベルや遊び方にあった形でプレイを進められる。また、1クエストあたりにかかる時間が長くても10分ほどと、手軽に遊べる点も強みだろう。総じて誰もがマイペースにプレイできることが、『モンスト』の無二の個性となっている。

 たとえば、仕事の休憩時間や、家事の合間、なんとなく手持ち無沙汰になったタイミングなど、ちょっとしたときに「1クエストだけ」とアプリを開き、遊ぶことができる。そのようにしてコツコツとプレイしていた結果、気がついたら以前より上位のクエストに挑戦できるようになっていたという経験をした方も多いはずだ。これはゲームという娯楽から得られる根源的な報酬と同質のものである。

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こうした成功体験が『モンスト』を通じて積み重ねられていった結果、よりユーザーは同タイトルのプレイに夢中となっていくという構図もありそうだ。

 顧客のニーズや市場の状況などのモニターデータに基づいたマーケティングツールを提供する株式会社スパコロは2022年1月、日本全国に住む15~69歳の男女・8852名を対象に、スマートフォンゲームアプリの利用実態に関する調査結果を発表した。これによると、スマホゲームの世代別利用率は、年齢が高くなるにつれて低下する傾向にあるという。一方、株式会社MIXIでリリースから『モンスト』の開発・運営に携わってきたプロデューサーの三島圭介氏は過去のインタビューのなかで、「(2022年11月現在では)ユーザーの平均年齢が(当初メインボリュームだった10代~20代前半から)30代前半へシフト。男女比も6:4と、性別を問わず愛されている」と明かしている。

 収益ランキングにおいて長くトップに君臨し続けるためには、(心理的にも経済的にも)課金に抵抗のない層へのリーチと、継続的にプレイしてもらえることが必須となる。その両面で「遊びやすさ」を追求し、成功を手にしてきたタイトルが『モンスト』なのだ。

■収益/ダウンロード数ランキング上位のタイトルに見る「習慣化」という共通項

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 一方、冒頭で紹介したランキングで上位となった別のタイトルに目を向けると、『モンスト』との意外な共通点も見えてくる。

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少なくないタイトルがユーザーに習慣化を喚起し、大きな収益/ダウンロード数を手にしてきた点だ。

 たとえば、収益ランキングの5位『パズル&ドラゴンズ』や、6位『ドラゴンクエストウォーク』、10位『Pokémon GO』、ダウンロード数ランキングの2位『Pokémon Sleep』、8位『Monster Hunter Now』などがこれにあたる。どれも「ユーザーに寄り添い、長く愛され続けること」「日常生活の一部をゲーム性に取り入れること」などを背景に、成功を手にしてきたタイトルたちである。特に『モンスト』と同時期にリリースされた『パズル&ドラゴンズ』は、ともに草創期から市場を牽引してきた。多くのモバイルゲームが盛者必衰の理のもとで次々と淘汰されていくなかで、現在もなお残り続けていることの裏には、運営の並々ならぬ努力があったのではないか。

 コンシューマーゲームを凌駕するほどの発展を経て、しだいにシュリンクしつつあるモバイルゲームの市場だが、10年が経過し歴史を俯瞰して捉えられるようになったことで、ようやく本当の意味で語られるべき功績を残したタイトルの区別が可能となった。スマートフォンに代わる携帯端末が現れる、あるいは運営があまりにもユーザーをないがしろにした対応を行うといった大きな転換点がないかぎりには、『モンスト』はこの先の5年、10年と、長くランキングに君臨し続けるのだろう。

 「モバイルゲーム史に残る金字塔」。そう呼ぶにふさわしいタイトルが『モンスト』であると言えるのかもしれない。

(文=結木千尋)

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