松本人志の提訴はなぜ「個人」? 平松まゆき弁護士が解説
2024/01/23

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 お笑いコンビ・ダウンタウンの松本人志(60)が女性を巡る自身に対する報道で名誉を毀損されたとして「週刊文春」の発行元である文芸春秋などを相手に損害賠償などを求める訴えを起こした。請求額は約5億5千万円。吉本興業は昨年12月27日、「当社として(中略)法的措置を検討」としていたが、松本個人による提訴となった。なぜ吉本の顧問弁護士ではなかったのか。かつて歌手デビューを果たした平松まゆき弁護士にQ&A方式で解説してもらった。

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 Q 松本氏が文芸春秋などを訴えました。当初、吉本興業は「当社として(中略)法的措置を検討」としていましたが、現在、松本氏には独自の代理人がついています。なぜ吉本の顧問弁護士ではないのでしょうか。

 A 考えられることの1つは「利益相反」です。弁護士法及び弁護士職務基本規程は、弁護士が利害が対立する複数の人を代理することを原則として禁じています。分かりやすいのは離婚事例です。例えば既に私が妻側から離婚相談を受けていたとすると、夫からの依頼は決して受任しませんし、そもそも相談であってもお聞きできません。弁護士業務の公正から禁じられています。

 この利益相反の問題は会社と社員の間でも生じ得ます。

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たとえば社員が紛争を抱えたことによって、会社にも損害が生じたような場合です。このとき、会社は社員に損害を賠償するよう請求する可能性があります。実際に請求するかしないかはケースバイケースですが、可能性がある以上は「潜在的」に利益相反があると考えられます。松本人志さんと吉本興業の契約関係や雇用形態の詳細は分かりませんから、あくまで一般論ですが。

 Q 素人目には吉本が「会社として守れない」として、会社の顧問弁護士を付けなかったのかなと思ってしまいます。

 A 一概には言えません。そういう場合も確かにあるでしょう。しかし、会社が守るべきはあくまでも会社(株主)ですから。それと、これもあくまで一般論ですが、会社の顧問弁護士や法務部所属の弁護士が、必ずしもあらゆる訴訟に長けているとは言えないということもあります。私の知り合いで業界最大手の法律事務所や大手企業の法務部にいる弁護士に聞くと、「法廷には一度も立ったことがない」「裁判所に行ったことさえない」という人もいます。

 Q そんなことがあるのですね。

 A あります。超優秀で、信じられないくらい大きな案件を担当しているけれども、それは企業法務、つまり取引や交渉であって、実際の裁判とは関係ないこともあるんですよね。それぞれ活躍する分野は様々ですし、依頼する側もどの弁護士を選ぶかは自由というわけです。

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